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瀬戸内ギャラリー第3回企画展|文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業

​藏本秀彦・水谷一 美術展

2021.10.1(金) ― 12.19(日)

国讃めと屍

[くにほめとしかばね]

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沖つ波来よる荒磯を 敷きたへの枕とまきて 寝せる君かも

 これは飛鳥時代の歌人、柿本人麻呂によるもので、瀬戸内海に浮かぶ島、現在は埋め立てられて陸続きとなっている沙弥島(香川県坂出市)を訪れた際、岸の岩場に倒れた亡骸を見て詠んだ歌の反歌。

長歌では言葉を尽くし、美しい讃岐を礼讃しています。続いて潮時の強風、沖の大波、岸に騒ぐ白波の描写がなされ、そして人麻呂は岩場に倒れ、荒波を枕にする亡骸を見て、その人の家や配偶者に思いを馳せます。鎮魂のため、人麻呂はこの歌を死者への手向けの花としたのでしょう。

 讃歌的表現は当時、「言霊信仰に支えられ、願わしいことの実現を目論む予祝的な表現といえばいえると同時に、権力者の心に叶う表現」※であったようです。その一方この時、人麻呂が訪れた島では荒波があり、強く風が吹き、そして目に見える死がある。こうしたイメージはどこかこのコロナ禍における私たちの世界に重なって来るようです。本展タイトル「国讃めと屍」はこの歌を巡る、出品作家である二人の現代作家の対話から生まれました。

 出品予定の作品はタイトルほど直接的ではないものの、二人の作家が「鎮魂」や「記憶」「過去と現代」「当事者性」といったキーワードからイマジネーションを得た作品となり、そのテーマは資料館の主たる守備範囲である「民俗学」にとっても重要なものです。

 民俗学は当初から「霊魂」の処理や行方、先祖の供養や無縁の霊が及ぼす災厄などについて強い関心をはらってきました。また、「話者」からの聞き取りを主たる資料としている民俗学にとって「聞き手」である採集者の客観性や当事者性、地域との向き合い方などは、「経世済民」を標榜してきた民俗学ゆえに、他の人文諸科学とは異なり、大きな課題ともいえるでしょう。表現者である芸術家と同様に対象への向き合い方がより問われる学問とも言えます。

 東日本大震災や、海の彼方に先祖の霊を送る精霊船の習俗などに想いを寄せた二人の現代作家が、木造船や漁具といった数々の過去の遺物が展示された大空間を背景に、民俗資料と現代アートのコラボレーションを試みます。新型コロナウイルス流行に端を発し、厳しい世情の続く昨今、人麻呂がかつて死を見つめた情景を表題に込めた二人が描き出す「現代表現の今」に是非ご期待下さい。

※)引用:寺川眞知夫『狭岑嶋の石中死人を視て作る歌』万葉古代学研究所年報第8号(2010年3月),奈良県立万葉文化館,p.10

  http://www.manyo.jp/ancient/report/pdf/report8_1_samine.pdf

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 柿本人麻呂が瀬戸内の海岸で詠んだ、石中の死人。「玉藻よし」から始まる讃岐の地への礼讃。その長歌に対する反歌二首に、一人の歌人の圧倒的な無力感を感じるのは私だけだろうか。多々ある死の中の一つの死。そこに遭遇し、歌人は何も出来ない。だが歌を詠む。その歌は後に生きる人々に詠まれる限り息をし続ける。「国讃めと屍」の出展作家、藏本と水谷は何故この歌をテーマにするのか。私たちの多くは、死を意識しつつも未来を描かない。無力であるから。二人の作家もおそらくはそうであろう。だが、抗う。今回の展示作品を通して遠く先の世界を生きる人たちとの対話すら試みるのだろう。瀬戸内海歴史民俗資料館の展示物は今を生きる私たちが過去と交流する場。瀬戸内ギャラリーは今を生きる作家たちが未来へと問いかける場。それを鑑賞する者はこの国の悠久なる時間を現在(いま)として認識し、考える。その豊かさある場は、幸いまだ日本には少なからず残されている。

なタ書 藤井 佳之

 

瀬戸内ギャラリーとは

 瀬戸内ギャラリーは、瀬戸内地方の歴史、民俗等に関する資料の収集、保管、展示、調査、研究を行う瀬戸内海歴史民俗資料館の第1展示室2階に2021年3月、新設された企画展示スペースです。今後、総合的・分野横断的な「瀬戸内文化発信の場」として、瀬戸内、海、くらし、伝承、技、心、デザイン、自然、環境などをテーマに、歴史・民俗・美術・自然・環境などの展示を展開していきます。

【瀬戸内海歴史民俗資料館 館長から展示に寄せて】

 

参加アーティスト

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藏本 秀彦 (くらもと ひでひこ)

 あれから10年が過ぎました。日本中が悲しみに沈んだ時、アートは即効性を持たず、その場で役に立たないことを突きつけられ、無力さを実感した瞬間でもありました。その時、やや決心にも近く記憶を風化させないというひとつの点においてのみ作品を作り続けようと思いました。 それと当事者性を獲得するということ。震災や原発をモチーフとして制作するということ自体に我々は尻込みしたし、批判の対象にもなりました。しかし福島にしても世界のテロルにしても当事者性を少しでも獲得しようとする姿勢が必要であると感じています。つまり想像する、イメージすることが、声高らかにではないかもしれませんが表現の使命だとも思いました。当時から信頼できない情報をテレビやモニターの表面から受け取り、日々の生活から思考停止される私達への警鐘として実際にある風景ではなく心の中の絶望を描いた「TRUST」は存在しています。

 それとは別に希望や悲しみの上にも、見えない不安の上にも同じく木漏れ日は降り注ぐ。「それでも木漏れ日は」という絵画には、とてつもない遠い未来に向き合う誇りと精神の錨を投げる決意と強さを込めました。2つの切り口の絵を描くことが僕にとってのバランスでもあったわけです。

​略歴

 筑波大学大学院芸術研究科修了。学生の頃より和歌山版画ビエンナーレ、西武版画大賞展、クラコフ国際版画トリエンナーレ、ブダペスト国際展など版画領域で独自な手法が注目される。その後「毎日現代展」に連続出品。「安井賞展」「VOCA」「ACRYLAWARD」「FACE」「ARTOLYMPIA」や「CROSSPOINT」(香川県立ミュージアム「高松市)美術館コレクション+木村忠太とこぼれる光の中で」(高松市美術館)などに出品。県内ではKinco.hostel+café、あーとらんどギャラリーなどで個展開催。その他、蝉丸(山海塾)、梅津和時(sax)、岩下徹(ダンス)、高橋芙美(渋さ知らズ)、usaginingen(artist)などコラボレーションも多い。

【​ウェブサイト】 https://kura-moto.wixsite.com/kuramotohidehiko

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水谷 一 (みずたに はじめ)

 寂しさもロマンも不在から生まれます。博物館の展示品 ー 遺物のそれぞれはいずれもかつての誰かの気配であり、遺物それぞれを使ったり作ったりした方のほとんどはもうこの世にはいません。彼/彼女らの生きた時代を私達は生きていません。実在の伴わない気配を不在と呼ぶとすれば、博物館は不在で溢れています。

 瀬戸内海歴史民俗資料館、第1展示室2階、瀬戸内ギャラリーの床に海面の広がりを想像してみて下さい。静かで鏡のように凪いだ海です。階下には大きな船舶を始め、この地域に人が生きた手触りのような沢山の遺物が並んでいます。ギャラリーの床を水面とすれば、1階の展示空間は水面下、つまり水中遺跡に見えて来ます。高く位置する海面はまた、あの災害にも連想は及ぶかも知れません。或いは、階下を過去=古い地層と捉えるなら、2階のギャラリーに今=現代層を感じる事も出来るかも知れません。

 かつて瀬戸内海に浮かぶある島では、新盆に灯籠、そして菓子や果物といった供物を乗せた小舟を海に流し、故人を偲ぶという風習がありました。今でもそれは形を変えて残っています。しかし時代と共に、岸から遥か沖に消える小舟を見届ける、そうした時間は消えてなくなりました。実在はもうそこに存在していないのです。

​略歴

​ 定住化の影響、人や動物の認知過程、社会変化、死生観の変遷について思考し、国内外で滞在制作を行う等、様々な機会、状況との影響関係の中で表現の実態や実体を問う。2000年代始めに高速道路を思わせる鳥瞰的風景画でキリンアートアワード(奨励賞、2003年)等、コンペティションを中心に発表を重ね、INAXギャラリー(東京)での個展(2003年)を経た2004年、国際芸術センター青森において場を取り込むインスタレーション『襞(ひだ)』を発表。それ以降、多様な表現手法を用いながら2021年までに14のアーティスト・イン・レジデンス参加。2010年「VOCA新しい平面の作家たち」、2013年「瀬戸内国際芸術祭」、2020年「富士の山ビエンナーレ」、2021年「歓喜のうた(愛知県立芸術大学サテライトギャラリーSA・KURAでの個展)」他、展覧会に出展。2019年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりベルリンに一年間滞在。また、2021年「イタリアの三日月」(AzumateiProject、神奈川)等、展覧会企画も行う。

【​ウェブサイト】 http://hajimemizutani.net/2019-2020

 

開催概要

展覧会名

瀬戸内ギャラリー第 3 回企画展 藏本秀彦・水谷一 美術展 国讃めと屍

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​会期

2021年9月18日(土)~12月19日(日)※観覧無料

開館時間

午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日

月曜日(月曜日が休日の場合は、原則として翌火曜日)

会場

瀬戸内ギャラリー(瀬戸内海歴史民俗資料館 第1展示室2階)

主催

瀬戸内海歴史民俗資料館(香川県立ミュージアム分館)

瀬戸内アートコレクティブ

 

会場アクセス

所在地

瀬戸内海歴史民俗資料館

〒761-8001 香川県高松市亀水町1412-2(五色台山上)

お問合わせ

087-881-4707

瀬戸内海歴史民俗資料館までのアクセス案内

自動車をご利用の場合

  • JR高松駅から ………………… 車で約25分(約16km)

  • JR坂出駅から ………………… 車で約30分(約20km)

  • 徳島方面から ………………… 高松自動車道・高松檀紙ICより車で約30分(約18km)

  • 岡山方面から ………………… 瀬戸中央自動車道・坂出北ICより車で約30分(約20km)

  • 愛媛・高知方面から …………… 高松自動車道・坂出ICより車で約35分(約24km)

JR高松駅からタクシーをご利用の場合:賃およそ5,000円

JR坂出駅からタクシーをご利用の場合:賃およそ5,500円

※タクシーを利用の場合は、事前にタクシー会社にお電話ください。なお、タクシーの運賃及びその他の所要時間については目安です。

最新のバス乗り場や時間・料金等については、高松駅の観光案内所等でご確認ください。

 

施設利用について

階段の多い施設です。車椅子による移動は職員が補助いたしますので、ご利用の際は事前にご相談下さい。 新型コロナウイルスの感染状況等により会期、内容が変更になる場合もございます。 事前に確認のうえ、ご来場のほどよろしくお願いいたします。

新型コロナウイルスの感染症拡大抑制のために、皆様のご協力をお願い申しあげます。

 

<入館の際のお願い>

〇当館の入館は、ご利用者のみに限らせていただきます。

〇以下の事項が当てはまるお客様につきましては、ご入館をご遠慮いただいております。 

 1.発熱や風邪、味覚、嗅覚障害の症状等、体調がすぐれないお客様  

  (風邪のような症状のある方には、スタッフがお声がけし、ご退館をお願いする場合がございます。) 

 2.マスクを着用していないお客様 

 3.ご家庭や職場、学校等身近に新型コロナウイルス感染症の方や感染の可能性のある方がいらっしゃるお客様

 

〇団体でご来館いただいた場合、ご入場の際には距離をとってお入りいただきます。

〇スマートフォンをお持ちの方は、厚生労働省の接触確認アプリ「COCOA」の事前ダウンロードをお願いいたします。   

【GooglePlay】 https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.go.mhlw.covid19radar   

【AppStore】 https://apps.apple.com/jp/app/id1516764458

 

〇不織布マスク着用の上、ご入館ください。

〇入館の際に、入館者カードを記入ください。洗面所内には薬用石鹸を配備してありますので、こまめな手洗いをお願いたします。

〇展示室を含む館内すべての場所で、他のお客様との間隔をじゅうぶんにおとりください。

〇展示室内の混雑をさけるため、やむを得ず入場制限を行う場合がありますので、ご了承願います。

トークイベント
出展アーティストの藏本秀彦氏、水谷一氏、瀬戶内海歴史⺠俗資料館⻑の田井静明氏、香川県立ミュージアム 美術コーディネーター 田口慶太氏を迎え、高松シンボルタワーにてMatterportを駆使し、「⺠俗資料」と「現代美術」の邂逅 について思いを語ります。また、11月初旬からは、香川県立ミュージアムやインターネットなどを通じて本展の記録集の販売も行います。
▶トークイベントへのご参加申し込みはこちら

 
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記録集販売
本展に関する企画背景や展示コンセプトを写真とともに紹介する記録集です。本記録集の閲覧体験が、瀬戸内をはじめとした地域社会の魅力あるこれからに資する新たな発想や思索を育む道程となることを心より願っております。ご購入はこちら
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仕様:A5判、96頁(モノクロ36頁、カラー60頁)
写真(表紙「人麻呂岩」及び、作品「TRUST」11点):藏本 秀彦
編集・写真(会場風景):水谷 一
デザイン:渡辺 望
発行元:瀬戸内アートコレクティブ
発行日:2021年10月30日
印刷・製本:株式会社イニュニック
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